取材協力:スズキスズキワールド新宿ドゥカティジャパン
文:ケニー佐川 写真:真弓 悟史 映像:アートワークス

Show Down ザ・対決! VOL.6 PART3

DUCATI 848EVO vs SUZUKI GSX-R750

速さという名の優しさ

マシン解説 SUZUKI GSX-R750

より軽く速く扱いやすく
生まれ変わった伝統のナナハン

GSX-R750といえば、かつてはTT-F1クラスで、その後はスーパーバイク世界選手権をはじめとするメジャーレースで大活躍してきた名門の血統である。現在の国産メーカーでは唯一の750ccクラスということで他のSSとは立ち位置を異にしているが、エンジン特性や車体設計、デザインの方向性も含めて、どちらかというと兄弟車の中ではR1000よりR600に近い存在と言っていいだろう。

北米やヨーロッパでGSX-Rシリーズの評価はとても高いが、「スズキは吊るしで速い」というがその理由。お金をかけて大改造しなくても、サーキットで勝てるマシンとして通っている。その中でもR750は趣味性の高いスポーツ志向のユーザーに好まれている。その理由はやはりベストバランスである。ワインディングでリッタークラスをカモる快感は、万国共通のようだ。600クラスのハンドリングと1000クラスのパワー。言い古された表現だが、その黄金律が多くのライダーを魅了するのだ。

新型GSX-R750は兄弟車のR600とともに今回フルモデルチェンジを行っている。シリーズ共通のコンセプトは「トップパフォーマー」。走る、曲がる、止まるというモーターサイクルの基本性能を常に最高レベルで磨き続けるという意味だ。これを実現するためのキーワードは「軽量化」と「加速性能」のアップである。

軽量化に関してはR600と共通のコンパクトなフレームの採用やエンジンパーツ、外装類を含めた徹底的な見直しによって、トータルで8㎏のダイエットに成功している。車体もダウンサイジングされた。スイングアーム長は従来のまま、ホイールベースを15㎜短縮しスリム化。オーバーハング(ホイールベースから出ている車体部分)も前後ともになんと35㎜も短縮し、さらなるマスの集中化を実現している。

加速性能については、エンジンのあらゆる可動部分を見直すことでメカニカルロスを低減。低中速域でのパフォーマンスとエンジンレスポンスを向上させることで、110.3kw(150ps相当)/13200rpmのスペックは従来と同じながら加速性能をアップ。優れた空力ボディのサポート受けて300㎞/hに迫るトップスピードを実現している。

動力性能の向上を受けて、足回りも強化されている。フロントブレーキには従来のトキコ製に代わり、今回新たにブレンボ製モノブロックキャリパーが採用され、強力なストッピングパワーとコントロール性を両立。フロントフォークにはレースシーンからフィードバックされたショーワ製のBPF(ビッグピストンフロントフォーク)を採用し、路面追従性と旋回性のさらなるレベルアップを図っている。

また、路面状況やライダーの好みに応じて出力特性を選択できる、S-DMS(スズキドライブモードセレクター)も第二世代へと進化。従来の3モード選択から2モード選択(Aモード=フルパワー、Bモード=穏やかパワー)とすることで操作を簡略化。扱いやすさとトップパフォーマンスを両立することで、幅広いシチュエーションとライディングスキルに対応したマシンに仕上がっているのが特徴だ。

 

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インプレッション 市街地編 SUZUKI GSX-R750

楽なライポジと扱いやすいパワーで
ストレスなく街を流せ

アクが抜けて洗練された。従来モデルは兄貴分のR1000の面影を引っ張っていて、車格もR1000並みに大きくちょっと虚勢を張っている印象だった。それが新型になって、脂っけが抜けてちょっと大人になった感じだ。車格も従来モデルよりひと回り小さくスリムになって、ぱっと見は400ccクラスのようだ。兄弟車であるR600と共通の車体なのだが、他のライバルメーカーの600ccクラスと比べても小ぶりである。R1000と共通イメージのフロントマスクについては好みが分かれるかもしれない。

縦型2灯になったが、横型3灯も迫力があって個人的には好きだった。軽量・コンパクト化はスーパースポーツの生命線でもあるが、見栄えからすると、従来型のほうが若々しく派手な感じはしたかもしれない。ライディングポジションはスーパースポーツとしては穏やかなほうで、ハンドル位置はやや高めでシート高は低く、ステップの位置もそれほど高くはない。シートもスズキの伝統で肉厚があってソフトだし、サスペンションもストローク感があり、ノーマルセッティングでもイニシャルの沈み込みが多めで乗ってすぐに馴染みやすい

といったように、走り出す前から温厚な性格が出ている。特に848EVOから乗り換えると、まるでツアラーに乗っているような感じだ。人は出会った瞬間の2秒間で相手との相性を判断するというが、ことバイクに関しても跨った瞬間にだいたいそのバイクが乗りやすいがどうか分かるものである。その意味で、R750はユーザーフレンドリーな感じがよく伝わってくる。まず取り回しからして、その軽さに驚くはずだ。スペック的には従来モデルより8㎏減量され「装備重量」190㎏と記されているが、実際はもっと軽く感じる。表記方法が異なるが、「乾燥重量」168㎏としている848EVOより明らかに軽い。これは驚異的だ。

エンジンは従来型の改良版だが、低中速トルクが増してECUのマップ制御が賢くなったことで、より扱いやすい出力特性となっている。見た目がそっくりの弟分のR600に比べると低速がある分、発進は楽だしストップ&ゴーの多い市街地などでは有利。ハンドル切れ角も十分にあるため、Uターンも不安がなくこなせる。いざグラッときたときでも、国産SSの中でも最も低いシート高(810㎜)のおかげで咄嗟に足を出せるので安心だ。

このあたりの安心感やユーティリティの高さはさすがに国産メーカー。S-DMS(スズキドライブモードセレクター)の恩恵も大きい。穏やかなパワー特性になるBモードを選択すれば、市街地でもスロットルワークにあまり神経を遣わずにストレスなく流せる。過激すぎないパワーと楽なライポジと相まって、市街地での使い勝手はSSとしてはとても良いと思う。

 

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インプレッション 高速道路編 SUZUKI GSX-R750

圧倒的な動力性能を
安心して引き出せる

高速道路もR750のテリトリーだ。やや角度の立った大きめのスクリーンは上体を極端に伏せなくても十分なエアプロテクションを発揮してくれるし、このカテゴリーになるとわずかでもハンドルが高いだけでも高速クルーズはだいぶ楽になる。その意味では移動手段としては848EVOに比べるとだいぶ快適である。

さらにエンジンがいい。14000rpm近くで150psを発揮するエンジンは、ひと昔前のリッタークラス並みに強力。軽量化された車体と洗練されたエアロダイナミクスにより、スズキの竜洋のテストコースでは300㎞/hに迫る最高速を記録しているという。ナナハンで300㎞/h・・・。ハヤブサが1300ccで挑んだ壁に迫るところまできているのだ。メガスポーツによる最高速競争の歴史をリアルに見てきた世代としては感動モノである。もちろん、公道ではそのパフォーマンスの半分も使えないだろう。でも、その性能をいつでも使える状態で所有していることが重要なのだ。それはバイク乗りにとっての浪漫でもある。

高速道路ではあいにくの雨だったが、S-DMS(スズキドライブモードセレクター)を試せるいい機会にもなった。最近のFIは良くできたもので、フルパワーのAモードでもスロットル開けしなのツキは穏やか。数年前のスーパースポーツのようにドッカンパワーに振り回されて、ウェット路面では怖くて開けられないなんてことはまずない。これは国産、輸入車を問わず言える。穏やかパワーのBモードにすればさらに安心。

ピークパワーだけでなくレスポンスも穏やかになるため、車体さえ垂直ならば、けっこうラフにスロットルを開けてもタイヤが空転することなく路面をつかんでくれる。BT016が標準装備されていることもあり、フルウェットでも接地感はそこそこ感じることができた。848EVOと同じブレンボ製モノブロックについてもパッドの特性の違いだろうか、こちらのほうが効きも穏やかでコントロールしやすいなど、ことさら雨天走行に関しては一緒に走った848EVOは気の毒にさえ思えたのだった。

 

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インプレッション ワインディング編 SUZUKI GSX-R750

スポーツライディングの入口に
だれもが立つことができる

ワインディングでのR750は特に素晴らしかった。写真はこちらも雨だが、実際にテストした日は秋晴れで、心の底からスポーツライディングを楽しむことができた。R750の真の素晴らしさは、誰もがスポーツライディングに親しめることかもしれない。誰もがというと語弊があるかもしれないが、たぶん大型二輪免許を取り立ての人でも半日ぐらい乗り回せば、自然にある程度の走りはできるようになっているだろう。そう思えるほど、ユーザビリティが高い。考えてもみてほしい。400cc並みの軽量スリムな車体に低いシート、ライポジも楽だし、穏やかパワーモードが選択できるのである。つまり間口が広いのである。

だからといって退屈かといえばその真逆! 扱いやすいからこそ自分の手足のように操れて、怖くないからガンガンに攻められる。848EVOは常にある程度の緊張感を求めてくるのに対して、R750はマシン任せでもとんでもない領域まで簡単に連れて行ってくれる。調子に乗ってしまって逆に危ないかもしれない。

ワインディングにこだまする直4サウンドもまた絶品。ノーマルマフラーでも十分酔わせる音を響かせてくれる。自分ではけっこう回しているつもりでも、14000rpmからレッドゾーンが始まるメーターを見るとまだ半分も回っていない。公道ではけっして使いきれないゾーンがたっぷり残っているのだ。コイツは半端じゃない。ちなみにS-DMSに関しては、アップダウンのある峠道をキビキビ走りたいのであれば、フルパワーモードがおすすめ。のんびりマスツーリングのときなどは穏やかモードが快適だろう。

ハンドリングは極めてニュートラル。ドゥカティのような倒し込むための “儀式”もいらず、目線を向けるだけでコーナーに吸い込まれていく。車体の姿勢も常にフラットな感じで、公道レベルではサスセッティングで乗りやすくする必要はほとんどないぐらい。しなやかにストロークする前後サスのおかげで、ギャップ通過時の収束性もよい。おそらくBPFの路面追従性の良さにも助けられていると思う。ワインディングで気持ち良くスポーツするための道具として見た場合、R750のトータルパッケージとしての完成度はピカイチである。だてにナナハンを作り続けてきたわけではない、スズキの底力を見た気がした。

 

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ディテール画像一覧 SUZUKI GSX-R750

■SUZUKI GSX-R750

■メーター

インストルメントパネルはR1000と共通の多機能タイプを採用。液晶パネルは拡大され、MotoGPマシン譲りのエンジンrpmインジケーターは4つの異なる回転数を設定できるタイプに進化(従来型は1つ)。ストップウォッチとラップタイマーが新たに追加された。ギアポジションインジケーターは従来型を踏襲する。

■フロントフォーク

ショーワ製の倒立テレスコピック式ビッグピストンフロントフォーク(BPF)新たに採用。ダンパーアジャスターが伸び側・圧側ともフォークトップに装備されていて、セッティングも容易なのが特徴。主に圧縮開始時における減衰特性を改善させることでハンドリングを向上。また、重量も従来型に比べて1040g軽量化されている。

■フロント

フロントホイールは小径アクスルシャフトにより、ハブとベアリングサイズが縮小し全体として210g軽量化(リヤホイールも同様に240g軽量化)。フロントブレーキにはφ310㎜ダブルディスクとφ32㎜4ピストンのブレンボ製ラジアルマウントキャリパーを装備、従来比で405g軽量化するなど、バネ下重量の徹底的な軽減が図られている。

■リア

コンパクトにスリムアップされたリヤビュー。LEDテールランプはスリムなテールセクションにビルトインされ、ターンシグナルはシートカウル上部を包み込むデザインとなった。スタイリングデザインは空力を追求しながら部品点数を減らし、外装全体で3400gの軽量化を実現している。

 

すんなり馴染める高性能がいい
ノア・セレン
最近では味わいのあるマシンも多く生まれてきたけれど、基本的には60年代からずっと運動性能の向上を進めてきた国産マシンたち。その中でも熟成の極みに達しているといえばこのGSX-R750でしょう。特に海外では「スズキの」GSX-Rではなく、もはや「GSX-R」という確固たるブランドが存在するようで、多くのライダーにとって憧れの存在になるほどの地位を築いている。
走ることを極めるマシン造りはすべてにおいて超高性能化するわけだけど、同時に初めて乗ってもすんなりと馴染むことができるのがGSX-Rの魅力。スポーツマシンを操る時は、ハンドルやシート、ステップなどバイクと人間が接する部分からマシンのあらゆるところへとライダーの神経が伸びていく。その作業がGSX-Rではとてもスムーズ。走り出してすぐに神経がサスペンションへ、タイヤへ、エンジンへと伸び始め、簡単には到達できない高い限界域がありつつもその手前の領域でもマシンとの一体感を感じられ、安心感をもって楽しくバイクを操ることができる。
優しいな、GSX-Rは。極めようと思ったら決して易しくはないけれど、どんなライダーでもどんな領域やシチュエーションでも優しい。GSX-Rならジーンズとポロシャツで、ジェットヘルメットのバイザーを上げて直線路を流すだけでもマン×マシンの対話を楽しむことができる。ツーリングでも急かされることなくハイアベレージをキープできるだろうし、今回のようなウェットコンディションでも恐怖感なく走り続けることができた。
残されるタスクはいかに個性を主張(といっても750を選ぶ時点で個性的だけど)するかなのかもしれない……。常に進化してきたスタイリングは他の国産SSと大きく差別化できているかといえば、そうでもない。今回のライバルのドゥカティと比べるとちょっとオリジナリティが乏しいかな? 僕だったらもんくナシの性能はそのままに、粋な大人を主張できるようなシックなカラーリングにオールペンしたいと思った。
ノア・セレン
父方の故郷であるヨーロッパのオートバイ事情に精通し、マン島をはじめ欧州のサーキットやイベント取材にも飛び回るモータージャーナリスト。旧いものから最新まで、オンでもオフでも、ツーリングからレースまで、ジャンルに関わらずオートバイの魅力を追求している。