取材協力:本田技研工業/ヤマハ発動機
文:ケニー佐川 写真:真弓 悟史 映像:アートワークス

Show Down ザ・対決! VOL.8 PART2

Japanese Standard “The Big Naked”
CB1300SF vs XJR1300

日本の良心

マシン解説 HONDA CB1300SF

Hondaの栄光と伝統を
背負い続けるフラッグシップ

「ホンダといえばCB」というぐらい、メーカーのイメージと直結したネーミングは他にないだろう。あえて挙げるとしたら「カワサキのZ」ぐらいか。高性能なビッグバイクとしての地位を世界基準で確立した、そのCBシリーズの元祖とも言える存在が69年に登場したCB750FOURである。

夢の200㎞/hマシンとして世界中のライダーを虜にしたCBは、当時の日本では最大排気量の“ナナハン”として憧れの的だった。その後、常勝を誇った耐久レーサーRCB直系のエンジンを持つCB900Fとその兄弟車のCB750Fなどの“エフ”シリーズ、耐久レーサーレプリカのCB1100Rへと進化しながら、CBはホンダのフラッグシップモデルの代名詞として受け継がれてきた。そして、80年代のV4エンジン全盛時代を経て、92年に「プロジェクトBIG-1」の元に新時代のCBとして復活したのがCB1000SF(通称BIG-1)だった。

コンセプトは「ビッグバイクの大きさや存在感を具現化し、感動的な性能を与えること」こと。そして、BIG-1こそが、 現行のCB1300SFのいわば直接の祖である。CB1300SFはいわば、ホンダの栄光ある伝統を背負ったモデルなのである。



 

現行のCB1300SFは2003年にフルモデルチェンジした2代目で、従来モデルに対し乾燥重量で20kg軽量化。エンジンは初代から受け継ぐX4ベースの水冷4スト直列4気筒1284ccを搭載。三次元点火時期制御システムPGM-FI(電子制御燃料噴射装置)の採用により、全域で俊敏かつ的確なスロットルレスポンスとスムーズな出力特性を実現している。

車体面では伝統的なダブルクレードル・フレームを採用しているが、ピボットやステアリングヘッド、エンジンマウント各部剛性の最適化を図ることで、低速域でのしなやかさと高速域での安定感あるハンドリングを実現。フロントサスペンションにはダンパー調整機構付きの極太φ43mmカートリッジタイプ正立フォークを採用、リヤショックは2段スプリングと伸び側15段、圧側4段のダンパー調整機構を装備したフルアジャスタブル式のツインショックを採用。ブレーキは標準仕様がフロントに対向ピストン4ポット、ABS仕様はピンスライド3ポットキャリパーをそれぞれ採用し、軽量・大径のφ310mmダブルディスクを装着。リアブレーキはφ256mmの小径シングルディスク&シングルピストンキャリパーとし、制動性能の前後バランスを確保している。また、機能面では12リットルのシート下収納スペースや盗難抑止機構「H・I・S・S」を採用。ライダーに必要な情報を提供するインフォメーションメーターを装備するなど使い勝手のさらなる向上を図っている。

マイナーチェンジも度々行われ、熟成度を高めているのも特徴で、2008モデルからはエンジン回転の安定性を向上させるIACV(Intake Air Control Valve)を採用。サウンドにもこだわり、エキゾーストパイプの集合方式を従来の180度から360度に変更し、排気干渉音を低減させることで重厚かつ迫力あるサウンドを演出しつつ、新たに触媒装置(キャタライザー)を採用するなど環境性能も高めている。スタイリングも2005年にマイナーチェンジを行い、新形状のサイドカバーを採用することで左右幅を20mmスリム化し足つき性を向上。また、シート前後の表皮パターンを変更し、ライダー側は動きやすく、またパッセンジャー側はホールド性に優れた仕様とし、乗り心地と質感を向上させている。

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CB1300シリーズは派生モデルの充実ぶりも見逃せないポイント。フレームマウントのアッパーカウルを装備した快適仕様の「スーパーボルドール」、大型スクリーンとパニアケースを標準装備とすることでツーリング性能をさらに高めた「スーパーツリーング」がラインナップされ、幅広いユーザーの要望に応えている。

 

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インプレッション 市街地編 HONDA CB1300SF

湧き出る低速トルクと
扱いやすさが最大の武器

神社仏閣のような日本の伝統建築や東京下町の旧い街並みにも、すんなりと溶け込む自然な姿にホッとするのは私だけだろうか。CB1300SFを見ていると何故か得も言われぬ安心を感じるのだ。どんなライダーをも受け入れる、その懐の広さがそう感じさせるのかもしれない。プロジェクトビッグワンの3代目に当たる現行モデルでは、スタイリングがより洗練されるとともに見た目のスポーツティさも増している。今回の試乗車には純正オプションのフェンダーレスキットやモリワキ製スリップオンサイレンサーが装備されているので一層そう感じるのかもしれない。威厳の中にも若々しいスポーティさを持ち合わせたデザインだ。足着きはいい。ちなみにシート高780㎜という数値はXJR1300より15㎜低く、同じホンダのスーパースポーツ、CBR1000RRに比べると40㎜も低い。ハンドル位置はXJRに比べるとやや低めで近く、タンクも短め。ステップ位置も低い感じで、車格の割にはコンパクトなライポジと言える。シートのやや後方にどっかりと座り込むと落ち着く感じで、基本的に穏やかな走りに向いているライポジと言えそうだ。

低速域ではハンドリングは軽快だが、やや作り込んだ軽快さも見受けられる。Uターンのようにハンドルをフルに切って曲がるような極低速域では、あるバンク角からステアリングがカクンと切れ込む傾向があり、それはそれでハンドルを切って曲がるスラローム的な走り方には好都合である。ただし、ハンドルが切れ込むことによる車体の「立ちの強さ」も同時に出てくるため、特に交差点を曲がるような低速コーナーでは、上体を入れるかやや当て舵をして車体を意図的に倒し込むような動作が必要になる場面もある。

何を隠そう、私自身もCB1300SFを所有しているので、このあたりのクセについては熟知しているつもりだ。XJRに比べても直進安定性が高く、速度が高まるほど安定感も高まるのがCBである。ハイスピードでも一定の軽快さが持続するXJRとは、ハンドリングの味付けの違いが感じられて面白い。

取り回しについては、一般的にその評価のほとんどが車重によって決まってしまう。正直なところ、装備重量261(ABS仕様は266㎏)のCBの大きく重い車体を取り回すのは辛いものがある。私も体格は大柄なほうだが、足場の悪い場所や傾斜地での取り回しはおっくうである。ただし、一度エンジンをかけてしまえば、図太いトルクの塊のような低速の粘りによって、エンストの恐怖に体をこわばらせることなく楽々とUターンをこなすことができる。たしかに車重はあるが、それを補って余りある極低速トルクがCBの最大の武器であり、大排気量直4エンジンのメリットをいかんなく発揮する場面である。アイドリングからでも加速していく様は、まるでフルサイズのアメ車にも似ている。十分なハンドル切れ角とその明快な切れ方といい、掛け値なしにこれほどUターンしやすいビッグバイクはないだろう。低速域での類を見ない「扱いやすさ」こそが、多くの講習会で教習車として使われ、白バイでもVFRに変わる次世代の車両として導入が進んでいる所以だろう。

ただし、エンジンのレスポンスは意外に鋭いため、スロットルワークには繊細さが必要。特にローギヤを多用する低速コーナーや交差点の曲がり角などでは、スロットルワイヤーの遊びを取ってから、じんわりと開けていく習慣をつけないとギクシャクすることになる。ブレーキは極低速域から高速域まで同じようなフィーリングで、入力に対してリニアに効力が立ち上がるタイプで扱いやすい。今回試乗した車両はABS仕様だったが、万が一の急制動でも人間がコントロールするより格段に安全に短い距離で停止してくれる。ことにCBのような重量級マシンにおいては、その安心感は絶大だとあらためて実感した。

 

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インプレッション 高速道路編 HONDA CB1300SF

余裕しゃくしゃくの動力性能で
季節が良ければ快適に距離を伸ばせる

高速道路では市街地にも増してCBのエンジンの良さが光る。とにかくトルクフルなので、5速トップギヤのまま、さらなる加速も追い越しも自由自在だ。どの回転数からもモリモリとくるパワー感にはいつも感心させられてしまう。それでいて、パワーフィールは肌理の細かいシルクのように滑らかで、スロットル操作に対してリニアかつ緻密に反応するエンジンは最高に気持ちいい。ノーマルの腹に響く重低音もいいが、今回装着されていた純正オプションのモリワキ製サイレンサーのやや乾いたサウンドも軽い感じで清々しさがある。

それにしても、2速からでもタイミングが合えばこの巨体のフロントを浮かせるだけのトルクは素晴らしいの一言。スーパースポーツが回転数によってパワーを絞り出すのに対して、ビッグネイキッドはトルク、つまり後輪で路面を蹴り出す力によって車体を押し出していく。ちなみにCBR600RRと比べると約半分の回転数で2倍以上のトルクを発生しているのだ。

高速域でのハンドリングは比較的安定志向で、ダンパーの効いた前後サスとも相まって重厚感があり、それがライダーにとっては安心感につながっていると言える。逆に低速域のようなヒラヒラ感は出ないので、レーンチェンジなどではステップや外足でしっかりキッカケを作ってやったほうが機敏な動き方をしてくれるはずだ。その際にも後方確認を行いたいところだが、四角い大きなバックミラーの視認性もまずまずだ。

ネイキッドにしては空力もいい。メーターのデザインの恩恵かと思うが、首から下への風の当たりが緩和されていてそれだけでもありがたい限りだが、冬場などは本格的なカウルが欲しくなる。動力性能や車体剛性的にはさらに100㎞/hぐらい速度を上乗せしたとしても余裕しゃくしゃくなのだが、歳をとってくると寒さに体がもたないのだ。「スーパーボルドール」(SB)や「スーパーツリーング」(ST)などのバリエーションモデルやグリップヒーターなどのアクセサリーの意味が身にしみて分かるというものだ。また、長時間乗り続けていると、シートにはもう少し厚みとウレタンにコシが欲しいと思うことがあるが、せっかくの足着き性の良さとのバランスを考えると微妙なところだ。

高速道路を使った移動をCB1300SFで快適にこなしたいなら、真冬時期は避けて距離も欲張りすぎないほうがいいかも。それ以上を望むならSBやSTの出番ということになるだろう。

 

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インプレッション ワインディング編 HONDA CB1300SF

キング・オブ・ネイキッド
に相応しい完成された走り

ワインディングでは一転して、CBのスポーティな一面が顔を現す。低速域での軽快感と高速域での安定感がほどよくミックスした感じで、俄然スポーティに走り出すのだ。低速域で感じたステアリングの切れ込み傾向も、コーナリング速度が上がるにしたがって緩和されていき、車体のバンク角を深めて遠心力をかけてやるほど自然なハンドリングになっていく。コーナリングにおける設定速度が思っている以上に高いのだ。たまにCBは「曲がらない」という人がいるが、それは旋回速度が不足して車体が起きてしまうからだろう。言葉で表現するのは難しいのだが、だれでも安心して曲がれるハンドリングだが、その一歩先まで踏み込めれば、スーパースポーツ並みのコーナリングも堪能できる。この間口の広さと懐の深さがCBの真骨頂である。

分厚いトルクの強みを生かして、スーパースポーツより遥かに低い回転域を使いつつ、悠々とコーナーを立ち上がっていく気持ちよさはビッグネイキッドならでは。中でもその醍醐味を最も鮮明に味わえるのがCBと言えよう。サスペンションもほぼフルアジャスタブル(フロントは伸側減衰調整のみ)で調整しがいがあるし、ツインショックなので簡単に調整できて乗り味も激変する。スーパースポーツよりも重量があって、それほど荷重をかけずともスロットルのオン・オフによってサスペンションを動かせるので、セッティングの成果を確認しやすいのだ。

その意味でも低い次元でサスセッティングを学べる教材でもある。ブレーキは非常にコントローラブルで、コーナーアプローチでの速度調整もしやすいし、万が一のパニック時にはコンバインドABSが強力かつ絶対的な安心感を持って巨体を止めてくれる。自由度の高いライポジはリラックスしたリーンウィズでも、上体を伏せ気味に構えた戦闘的なハングオフスタイルでも許容してくれる。乗り手に次第でいろいろなライディングシーンを自在にデザインできるのがCBなのだ。

思えば初代ビッグワンのCB1000SFは荒々しくスポーティなハンドリングだったと記憶している。前後18インチのホイールや腰高な重心ポジションを生かした豪快なコーナリングが持ち味だった。これが2代目となる先代CB1300SFではX4がベースとなったこともあり、排気量は拡大してパワフルにはなったが、シート高がぐっと低く重量も大幅に増えてクルーザーチックな乗り味となってしまった。それはそれで、まったりとツーリングするには快適だったが、「走りのCB」のイメージは薄らいでしまったことは否定できない。そして、現行モデルとなる3代目では、初代の持っていたスポーツマインドと先代のパワフルさを併せ持つ、理想的なビッグネイキッドとして完成度が高められた感じだ。今回、あらためてじっくり試乗してみたが、さしたる不満が見つからないのだ。それ故、デビューからすでに8年が経つが、未だ大きな変更もないまま現役で走り続けているのだと思う。キング・オブ・ネイキッド。まさにCBにこそ相応しい称号だと思うがいかがだろう

 

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ディテール画像一覧 HONDA CB1300SF

■エンジン

PGM-FI採用の水冷直4DOHC4バルブ1284cc。気筒ごとに独自の制御を行う3次元マップによる点火時期コントロールにより優れたスロットルリニアリティを追求。12ホールインジェクターにより全域で俊敏・的確なレスポンスとスムーズな出力特性を発揮、低中速域での優れたトルク特性を実現している。スロットルボディにはIACVを装備し、アイドル回転数の安定化と冷間時での始動性にも貢献。

■リヤ

リアブレーキはφ256mmの小径シングルディスクに軽量コンパクトなシングルピストンとし、前後で適切な制動性能のバランスを確保。リアショックは赤スプリングが特徴的なリザーバータンク装備のショーワ製ツインショックを採用。フルアジャスタブルタイプとし、幅広いセッティングに対応する。フットブレーキを操作するだけで前・後輪が連動するコンビブレーキシステムに、ABSを組み合わせた「コンバインドABS」をタイプ設定。

■タンク

優雅な曲線を描くボリューム感たっぷりのタンクは「ビッグワン」プロジェクトの象徴的デザイン。排気量に見合った21リットル大容量タイプで十分な航続距離を確保する。写真は伝統の赤×白に濃いブルーのストライプが入った2011年カラー。

 

 

■シート

優れたフィット感で疲労軽減に貢献するシートデザイン。ライダーの居住性を犠牲にすることなくシートとサイドカバーの幅を極力スリム化し、優れた足着き性を確保している。レザー切り換えパターンとリアルステッチによる高い質感もポイントだ。リヤシートもパッセンジャーの居住性に配慮した座面形状とユーザビリティに優れる分割式グラブバーを装備。

■メーター

シンプルかつラグジュアリー感のある2連メーター。自発光タイプの文字盤を採用し夜間でも見やすいのが特長だ。タコメーター内に時計と燃料計を表示する液晶パネル、インジケーターランプの下に、一日の走行距離や外気温といった各種情報を表示するインフォメーション液晶パネルを装備。

 

■フロント

フロントブレーキはABS仕様にはピンスライド3ポット(写真)、標準仕様には対向ピストン4ポットをそれぞれ採用。軽量大径φ310mmフローティングディスクをダブルで装着する。フロントフォークは適切なダンピング特性を実現する極太φ43mmカートリッジタイプを採用。メッキ処理後にウルトラバフ仕上げを施し、低フリクションのダストシールとともにスムーズな作動性を確保。伸び側ダンパーは無段階でセッティング可能。