Show Down ザ・対決 VOL.12

取材協力:トライアンフジャパン
/ヤマハ発動機
文:ケニー佐川 写真:山家健一 映像:アートワークス
 

曲者ぞろい
だから面白い

 

今Vツインと聞いてすぐに思い浮かべるのは、かのイタリアの赤いバイクである。ドゥカティ以外にもイタリアにはモトグッツィのように伝統的に縦置きVツインを採用し続けるメーカーもあれば、アプリリアもずっと主流はVツインだった。北米に目を転じればハーレーも45度Vツインだし、そこから発展したビューエルも同じ。国産にもかつて打倒ドゥカティを目指し、実際に勝利したホンダのVTR1000SPシリーズやAMAを闘ったスズキのTL1000Rがある。そういえば、VTRのエンジン供給を受けて復活したイタリアの名門、モンディアル・ピエガなどもあったけ……。

ひとつ言えるのは、いずれ劣らぬ個性派揃いであり、ひと癖もふた癖もあるマシン揃いということだ。ただ、最近はこうした面白いVツインが少なくなりつつある。個性はときに天邪鬼なものだ。歯切れの良い鼓動感は一方でトルク変動の大きさとなって、低速域でのバランスを難しくしたり、極低速でのエンストを誘うこともある。特に国産メーカーが得意とする直4に慣れた日本人にとって、Vツインは扱いずらいという先入観があるかもしれない。

でも、扱いやすさだけがバイクの魅力ではないはずだ。ときにはUターンで四苦八苦したり、自分の腕のなさを痛感させられることもあるかもしれない。それであっても、人間の本能に訴えてくるVツインのリズムに心を燃やし、Vツインゆえのスリムな車体が実現する切れ味鋭い走りに酔いしれられるのは、その所有者だけの特権である。

というわけで、今回は個性派揃いのVツインの中でも、よりマニアックな2台をチョイスしてみた。1台は“イタリアの宝石”と例えられ、高価なパーツと手作業による精緻な作り込みから、走る芸術品とも呼ばれるビモータの「DB8」。対するは、オフロードイメージから脱却しトータルスポーツバイクメーカーとして躍進著しいKTMから「RC8R」をピックアップ。ともに排気量1200ccに迫るトップエンドのスポーツモデルである。独自の立ち位置からVツインスポーツを作り続けてきた、彼らの世界観をとくと堪能してみたい。まずは「DB8」から見ていこう!

 
 

 

妥協なき品質の追求から生まれた
真のプレミアムスポーツ

 

1966年にイタリアで産声を上げたビモータ(BIMOTA)。その社名は創始者の3人の頭文字からとった話は有名である。当初から、他社製エンジンを自社製オリジナルフレームに搭載する手法を得意とし、職人の手作りによる高品質少量生産によって常にハイクオリティなモノ作りを目指してきたメーカーである。以前はホンダやヤマハ、スズキなどの国産メーカーのエンジンを使ったスポーツモデルも多く手掛けてきたが、最近ではドゥカティがベースになることが多い。現在のビモータの代表作である「DB8」も、ドゥカティ1198の水冷Lエンジンを搭載している。

 

 

「DB8」シーズは2010にデビューしたビモータのフラッグシップモデルである。ドゥカティの先代最強スーパーバイク、1198に採用されていたLツインエンジン、通称テスタストレッタ・エボルツィオーネを独自のフレーム理論に基づく、クロモリ製鋼管とジュラルミン製プレートをつなぎ合わせたコンポジットフレームに搭載しているのが特徴だ。

エンジンは1198がベースだが、FIプログラムは吸排気系の変更に伴いリセッティングされるとともに、トラコンやパワーモードなどの電子デバイスが取り除かれた独自のチューニングが施され、ドゥカティLツイン本来のワイルドなキャラクターがより際立つ設定になっている。

足まわりには前後にフルアジャスタブルタイプのマルゾッキ製倒立フォークとエクストリームテック製ロー・ハイ調整式モノショックを装備。ブレンボ製ラジアルマスター&ラジアルマウントキャリパーと軽量なOZ製アルミ鍛造ホイールにより、強力なストッピングパワーと鋭いハンドリングを実現している。

そして、なんといってもビモータの真骨頂といえば、使われている素材のクオリティ。フレームの一部とエンジンハンガーを兼ねたプレートやキャリパーブラケット、スイングアーム後端部のアクスルホルダーやチェーンアジャスター、ステップやレバーといった操作系パーツにいたるまですべてアルミ削り出しパーツを使っている。さらにカウリングはなんとドライカーボン製である!

世界の一流ブランドと一品モノに近い高品質素材によるパーツを惜しげもなく使い、カロッツェリアの職人たちがひとつひとつ丁寧に組み上げた作品。それがビモータであり、他の大量生産メーカーには真似できない魅力となっている。

今回の試乗した「DB8」はタンデム可能なスタンダード仕様の設定で、最強バージョンの「DB8 SP」と異なる点はカラーリング、ステンレス製サイレンサー(SPはチタン)、フロントキャリパー(同モノブロック)、シートフレーム(同モノコック)などとなっている。

価格:「DB8」 343万円/「DB8SP」 348万円

 
 

■エンジン

ドゥカティ1198の水冷4バルブ・デスモドロミックLツイン(通称テスタストレッタ エポリューション)をベースに吸排気系とマップ変更により低中速寄りにチューニング。電子デバイスはあえて採用せず、最高出力146.9ps/8000rpmを実現。フレームは楕円断面のクロモリ製パイプとアルミ削り出しプレートを組み合わせたコンポジットタイプとして優れた剛性バランスを実現。

■サスペンション

サスペンションはフロントにマルゾッキ製φ43㎜倒立フォーク、リヤはエクストリームテック製リンク式モノショックとイタリアンブランドで統一。前後ともプリロードおよびダンパー調整が可能なフルアジャスタブルタイプで、リヤショックの減衰機構には伸び側・圧側とも低速・高速の2ウェイアジャスターを装備するという豪華さ。スイングアームもクロモリ製で、リヤサスのアッパーマウント部を兼ねる構造となっている。

■フロント

ブレーキはブレンボ製。フロントにはφ320㎜ダブルフローティングディスク+4ピストン4パッド・ラジアルマウントキャリパーを装備。フォークボトムと一体のキャリパーサポートもアルミ削り出し。ホイールはOZ製アルミ鍛造製の軽量タイプ。

■リヤ

リヤには220㎜シングルディスク+2ピストンキャリパーを装備。スイングアーム後端部とチェーンアジャスター、キャリパーサポートに至るまでアルミ削り出しパーツを使用。

■ステップ

ステップまわりも当然削り出し。軽量化にこだわりペダルまで肉抜きされている。ペグの位置も調整式とするなど、少量生産ならではのきめ細やかなで美しいディテール仕上げがビモータの魅力だ。

■レバー

レバー1本にもこのこだわりよう。赤いスクリューはアジャスター。ビモータの刻印が誇らしい。

■フューエルタンク

4輪のスーパーカーを思わせるエレガントなスタイリング。とにかくスリムでコンパクトだ。燃料タンク容量は18ℓと十分なキャパを確保する。シートは完全にスポーツライディング対応のソリッドな感触だ。

■メーター

シンプルな中にも品格を備えたコックピット。タコメーター上を踊る針に同調してパネルの内側から赤色LEDが点滅する仕組み。ディープブルーの液晶ディスプレイと合わせて、なんともいえない上質感を演出している。

 


 

 

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