オーストリーに本拠を置くKTMは1934年創業と歴史は古く、当初は小さなエンジニアリング会社としてバイクの修理などを手掛けていたという。KTMとして本格的にモーターサイクルの製造を始めたのは53年からで、当初はオンロードやスクーターなどの小排気量モデルが中心だったが、その後モトクロスやラリーなどの競技で実績を上げるとともに、近年はオフロードモデル専用メーカーのイメージが定着していた感がある。ダカールラリーでの11連覇などオフロード界では圧倒的な存在感を誇っているが、ここ数年はモタードやツアラー、さらに本格的なロードスポーツモデルまでを含めた総合スポーツバイクメーカーとしての道を歩み始めている。
「RC8R」はKTM初となる純粋なスーパースポーツモデルであり、KTM最強のロード系フラッグシップモデルである。「折り紙」にも例えられるエッジの利いたデザインは、さも過激な印象を与えるが、実は絶対的なパフォーマンスよりも継続的に高いアベレージをキープできる性能を重視したエンジンとライダーを疲れさせない車体作りがKTMのコンセプト。よって、サーキットにおいても、ロングディスタンスになるほどトータルタイムでライバルを圧倒する存在となる。
エンジンはKTM伝統の水冷75度Vツインをレイアウトに持つ「LC8」の中でも最強の1198ccバージョンを搭載。ちなみに昨年までラインナップしていたSTDのRC8は1149ccである。パウダーコートが質感を高めるフレームは、しなりと強度をバランスしたクロモリ鋼製で単体重量はなんと7.3㎏と自転車並みの軽量化を実現しているのが特徴だ。
足まわりには前後にフルアジャスタブルタイプのWP製倒立フォークとリンク式モノショックを装備し、しなやかな路面追従性を実現。ブレンボ製ラジアルマスター&ラジアルマウントモノブロックキャリパーとマルケジーニ製ホイールにより、強力かつ正確な制動力を確保している。
そして、KTMの強烈なアピアランスを印象づけているのはデザインだ。近年におけるKTMのプロダクトデザインはすべてザルツブルグにあるデザイン会社「キスカ」が担当している。面をはっきりと切り分けるエッジィな造形美はKTMのコンセプトである「速さ」「軽さ」「ピュア」「緊張感」などをキスカが具現化したものだ。社内のしがらみから離れた自由な発想から、KTMのあの独創的なデザインが生まれているのだ。
もうひとつ、KTMが掲げているのが「Ready to Race」というスローガン。これはレースで培った技術やノウハウは常に市販車にフィードバックされることを意味している。ストック状態でのマシン性能がレース成績に直結するプロダクションレース等で強さを発揮するのがKTMのマシン作りの特徴であり、それは長年におけるオフロードレースでの活躍でも実証済み。最近ではRC8Rが2011年度ドイツスーパーバイク選手権チャンピオンに輝くなど、ロードスポーツ部門でも真価を発揮している。
価格:207万9000円 |