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ケニー佐川の編集長ブログ

大人の粋なモータースポーツ


明けましておめでとうございます。

皆さま、旧年中は大変お世話になりました。

本年もどうぞよろしくお願いいたします!

 昨年、日本は大震災や原発事故など未曾有の災害に見舞われ、多くの尊い人命が奪われ、人々の心に深い傷跡を残しました。今までの日本の「安全神話」が崩れた瞬間でした。私自身、生きるということ、家族の大切さ、働くことの価値など、普段あまり意識してこなかった、しかし最も大事なことについて正面から向き合わずにはいられませんでした。復興支援のチャリティイベントにも参加させていただきましたが、犠牲者や残された家族のことを思い、自然と涙があふれ出てきたことを思い出します。

世界に目を転じても、多くの国が通過危機や経済格差、テロリズムなど根深く重い問題に苦しんでいます。その一方で、ITに代表されるハイテク情報産業はまるでロケットのように猛烈に加速し続けながら、急速に世界を狭くフラットなものにしつつ同時に情報格差を生んでいます。まさに混迷の時代、今までの常識が通用しない時代、という認識はだれもが肌感覚として持っているものと思います。

ここ数年、いつも年始のご挨拶は重苦しい言葉が並んでしまい、私自身、気が滅入りそうになります。でも、今という時代に日本という国に生きる私たちは幸せだと思います。贅沢や安全が当たり前になってしまったが故の悩みではないでしょうか。他国では今でも戦争や飢饉で命を落とすようなことは珍しくないわけで、日本でも昔はもっと苦しい時代がいくらでもあったことでしょう。それを考えれば、自分たちは幸せと思わなくては、といつも考えています。震災によってその思いは一層強まりました。先が見えない時代だからこそ、自分の足元をしっかりよく見て歩き、志を同じくする人たちと協力し合って先に進んで行こうと思っています。

私が直接関わるバイク業界も、あまり景気がいいとは言えません。バイクの販売台数は最盛期だった80年代の10分の1と言われています。市場規模は全体としては縮小しながら、新興国向け小型実用モデルと先進国向け大型スポーツモデルに2極分化している感じです。趣味としてのバイクは後者の方ですから、それらをリードしてきた先進国の元気がなくなれば当然、マーケットも衰退していきます。若者のバイク離れも世界的な兆候です。

何故なのか? 世界的な不況に加え、高性能化によるバイク価格の高騰、モバイルやIT機器など、人々にとってバイクより魅力的なアイテムが世の中に溢れているから、という意見も多いようです。でもそれだけでしょうか・・・。自分自身を思い返してみると、バイクに乗り始めたきっかけは、乗っていた先輩や友人が「カッコいい」と思ったからで、自分も「ああなりたい」と思ったからです。ビッグバイクや外車を颯爽と乗りこなす彼らに憧れ、自分もいつか同じことをやってみたいと切望したのが原点です。少年だった私は、羨望の眼差しで先輩ライダーたちの背中を見て育ったわけです。

小さな子供たちは皆、仮面ライダーが大好きで「ライダーごっこ」をやっています。バイクを見れば、素直に「カッコいい!」と目を輝かせて近寄ってきます。それが何故、大きくなるにつれ興味を失ってしまうのでしよう。それは私たちライダーにも責任があるのではないでしょうか。もしかしたら、バイクではなく、それに乗っている人間に魅力がないのかもしれません。子供や若者に「自分も将来ああなりたい」と思わせるオーラが足りないのではないでしょうか。

カッコ良さというのは、スピードや派手なテクニックだけではありません。もちろん、上手く乗れたほうがカッコいいですが、運転マナーや安全意識はもちろんのこと、態度や服装、マシンの整備などについてもキッチリしていることがむしろ大事なのでは。自戒の念を込めて言っています。それは人間性とも重なってきます。自分を大事にできない人が、人を大事にできるはずがありません。また、人に迷惑をかける運転や不快にさせる態度をして平気な人は、きっと他でも独りよがりで幼稚な言動をしているはずです。それは想像力の欠如であり、混合交通の中では危険因子でもあるのです。もし、そんな運転をしているライダーを見たら、親は子供に何と言うでしょう。感性が鋭く共生意識の強い現代の若者はどう思うでしょう。

もうひとつ、「夢」を語れることも大事だと思います。仕事を通じての自己実現でも、家庭のことでも、将来チャレンジしてみたい冒険でも何でもいいです。夢とは、その人にとっての大切な何かです。夢を語れる人は輝いて見えますし、人はその姿に心動かされます。私も毎年、年始には家族で各々今年の目標を書いて家の壁に張り出します。その中にはかなり俗っぽいものがあったり、多分に夢の部分も含まれていたりするのですが、有言実行にしないとなかなか「夢」は実現しませんから(笑)。バイク乗りは皆、ロマンティストでカッコつけ屋だと思っていますがいかがでしょうか。

かく言う私も、良くも悪くもそんな一人で、アラフィフになった今でも密かにいろいろな野望を持っています。若者たちに「いつかバイクに乗りたい」と憧れを抱かせるようなメディアを創っていきたいですし、すべてのライダーに安全とライディングの楽しさ、素晴らしさを伝えたいと思っています。それは、私に夢と目的を与えてくれた、バイクへの恩返しでもあります。他にも海外レースや海外ツーリングなども企画してみたいし、昔ちょっとかじったことがあるヨットで大洋に乗り出す、なんて大それた野望まで(汗)。どれも簡単ではないですが、夢を持ち続けることは難しい時代を生きていくエネルギーになるはずです。バイクは乗る人に「夢」と「自由」と「感動」を与えてくれる、素晴らしい乗り物だと思っています。

今年もまた皆さんと一緒にバイクと戯れ、夢を膨らませていけたら幸いです!

 「MOTOCOM」編集長 佐川健太郎

Written on 1月 4th, 2012 , Kenny's Talk, MOTOCOM トピックス

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