Show Down ザ・対決 VOL.13

取材協力:トライアンフジャパン
/ヤマハ発動機
文:ケニー佐川 写真:山家健一 映像:アートワークス
 
 
 

もしかしたら
万能メガスポーツかも!?

タイガー・エクスプローラーの第一印象は、とにかくデカい!260㎏という重量もさることながら、その存在感に圧倒される。特にタンクまわりの張り出しがハンパではない。タンク本体はよく見るとそれほどではないのだが、カウルを兼ねたサイドの張り出し部分がフラグシップを主張している。エンジンもさすがは1200ccオーバーだけあり巨大! 正確には1215ccなのだが、この微妙な数値がキモで、スペック上でもR1200GSをなんとしても超えようという強い意思が感じられるのだ。 そして、カッと目を見開いたような鋭い顔つきも恐ろしいほどの迫力。さながら古代に生息していた怪鳥のようだ。

TRIUMPH TIGER EXPLORER

さて、跨ってみると、意外にもシートは低く、足着きは悪くない。タイガー800と比べても楽なぐらいだ。ただ、渋滞路などでちょっとバランスを崩すと重量が顔を出す。燃料タンク容量は20リットルとこのクラスとしてはけっして大きすぎるわけではないが、それでも満タンにすると、タンク搭載位置の高さと直立したエンジンのレイアウトにより腰高感が強く、けっこうグラッとくる感じは正直ある。低速コーナーでの倒し込みなどでも、高い位置から車体を落とし込んでいくようなダイナミックさがあり、一方ではそれゆえのロール方向の慣性力の大きさを感じる。当然と言えば当然だが、「ヒラリ」という感じにはいかないのだ。善くも悪くも、とにかく“重量感”がいつも付きまとうマシンだ。

サスペンションは割とソフトめでダンパーはそこそこ効いているが、バネレートは低めの印象。コーナー手前でブレーキングすると、予想より大きめにピッチングが出る。フルブレーキングしようものなら底付きしそうな勢いだ。それだけ重量の影響を受けているのかもしれないが、フロントサスペンションに少しプリロードをかけたほうがシャッキリするだろう。特にオフロードに分け入る場合は、プリロードをやや強めにかけて、残ストロークを稼いだほうがギャップ越えなどでは安心できると思う。

TRIUMPH TIGER EXPLORER

ちなみにオフロードは想像していた以上に走れる電子制御スロットルの滑らかな出力デリバリーとトラクションコントロールにより、巨大トルクを自分の支配下に置くことができる。ことさら、路面ミューが低く滑りやすいダートでは、トラコンの恩恵は大きい。このクラスの大排気量アドベンチャーモデルになると、ただでさえオーバーパワーで持て余し気味になるところ、もし大きく滑ってしまったら、その重量を考えてもよっぽどの腕がない限りほとんどコントロール不可能である。それが、電子デバイスの恩恵により、滑りをコントロール範囲に抑えて安全なコーナリングを楽しませてくれる。電子制御ABSはオン・オフできるタイプだが、ABS作動時の動きは自然で、個人的にはオフロードでも作動させたままの状態で十分使える性能だと思った。

TRIUMPH TIGER EXPLORER

高速道路はタイガー・エクスプローラーの独壇場だ。大排気量直列3気筒が生み出す怒涛のトルクは、137PSのピークパワーをデータとして参照するまでもなく頼もしい限り。もともとワイドレンジトリプルエンジンの特性も、ここまでくるともうトルクバンドなど気にする必要もない。いつでもどこでも何速からでも、スロットルを開けた分だけ加速していく。その加速感たるや、メガスポーツ並みと言っても過言ではない。高速コーナーのスタビリティも素晴らしい。低速域ではネガでしかなかった重量が一点してメリットととなり、落ち着きのあるハンドリングとともに路面に貼りつくようなピタッとした安心感を与えてくれる。加えて、“前傾しなくていい”快適なライポジと風圧を跳ね除けるウインドプロテクション。そして、ABSやトラコンなどの安全装備の数々。

ここにきて、ようやく理解したのは、タイガー・エクスプローラーは単なるアドベンチャーツアラーの枠を超えた、「オールラウンド・メガスポーツ」であるということ。つまり、圧倒的なパワーと車格を生かして、環境さえ許せば200㎞/hオーバーの高速移動を楽に快適にこなすとともに、必要があればフルダートを含む悪路を安全確実に走破できるアビリティを持ちあわせたマシンということだ。

TRIUMPH TIGER EXPLORER

これは、同じカテゴリーで激突する、BMW R1200GSに対しても微妙な立ち位置の違いを表している。タイガー・エクスプローラーはGSに比べると圧倒的にパワフルで車格でもひとまわり大きく、高速ツアラー的要素が強い。逆に低速域やオフロード性能では、フラットツイン独特の低重心メリットやESA(電子調整式サスペンション)による高い路面アジャスト能力を持つGSが有利と言っていいだろう。装備面でもGSとほぼ互角なレベルまできている。オプションではあるが、グリップ&シートヒーターやヒートウェア、GPSなどの電気アクセサリーを同時に使用することができる点も嬉しい。そして、何といっても素敵なのがサウンド! 現行トライアンフのアイデンティティにもなっている並列3気筒が奏でる排気音は、直4の金切り声ともツインのドコドコとも異なる独特の音色。ちょっと湿ったハスキーな調は、ときにアストンマーチンのV12気筒にも似て、官能的ですらある。極端な話、このサウンドだけで「買い」である。スペックだけで表せない、これがモーターサイクルの奥深い魅力なのだ!

さて、次回はいよいよ今回のライバル車であり、国産を代表するアドベンチャーモデルの雄、「XT200Zスーパーテネレ」をクローズアップしてみたい。

 
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