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ケニー佐川の編集長ブログ

大人の粋なモータースポーツ


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スラクストンレーサーについて語ろう

「もて耐マスターズ」から早3ヶ月・・・・・・。この夏は記録的な猛暑とともに私の記憶にも永く残るであろう“ひと夏の思い出”となった。年に一度ぐらいはこうした感動を皆さんと分かち合いたいものだ。もちろん、次は皆さんが主役になってもらいたい。

さて、この間、筑波のイベントレースに参戦するなどの活動はしていた(追ってご報告します)のだが、雑誌やWEBマガジンに加えて、ライテクDVDの制作(ついに出ます!ケニー佐川のヒザ擦りメソッド。詳細は追ってご紹介します)や新しいメディアのプロジェクトや育児(実はコレが一番大変)などでてんてこ舞いだったのだ。

で、前回のブログで予告したとおり(といってもだいぶ間が空いてしまってスミマセン!) 今回は「もて耐マスターズ」の一番の功労者、7時間で158周、758.6?を走り切ったスラクストンについてふれたい。

「もて耐マスターズ」に向けて製作したスラクストンレーサーは、スタンダードの乗り味をなるべく生かす方向でファインチューンを施した仕様である。車両は08モデルの中古車をベースにトライアンフ市川で製作。エンジンやフレームには一切手を加えておらず、ホイールもフロント18、リヤ17インチのノーマルをそのまま使用。鉄フレームとスポークホイールの織りなす、昔ながらの揺らぎを伴ったおおらかなハンドリングが持ち味となっている。また、60?70年代のカフェレーサーをデザインコンセプトとしているため、当時の面影を残すロケットカウルを装着するなどシルエットにもこだわった。(いま一度、メイン写真をご覧ください! 自画自賛してしまいますが、ノスタルジックでスタイリッシュなまさに“違いが分かる大人の粋なモータースポーツ”を体現しているでしょう!)

ただ、見た目はクラシカルだがサーキット走行にも対応した現代的な装備もまとっている点に注目したい。吸排気系にパワーコマンダーとARROW製フルエキを投入することでパワーアップ。足回りもリヤサスにオーリンズ製サブタンク付きフルアジャスタブルツインショックを装備、フロントフォークは「ホソヤサポート」でノーマルをベースに内部をレース用にチューニングを施した。タイヤもOEMのバイアスからラジアルタイプのダンロップ製アルファ12にアップグレードすることで旋回安定性を向上させている。また、世界屈指のブレーキングコースとして知られる「ツインリンクもてぎ」に合わせてブレーキパッドをZCOOに交換。エンジンの熱対策としてオイルクーラーを増設するなど真夏の耐久レースに対応した仕様となっている。

以下に今回のモディファイのポイントをかいつまんで紹介しているので、スラクストンや他のネオクラシカルマシンでのレース参戦やストリートカスタムの参考にしてほしい。

さて、ふと気が付くと街にはクリスマスソングが溢れ、師走の足音が聞こえてくる今日この頃。年末進行でまたドタバタしちゃうだろうけど、そろそろ来シーズンへ向けての計画と準備を進めなくてはならない。もちろん、初心貫徹でスラクストン・プロジェクトは続けていくつもりなので期待していてほしい! とりあえず、次回は10月末に筑波サーキットで開催されたMCFAJクラブマンロードレースへの参戦の模様をレポートしたい!

 

_DSC0011.jpgダイノジェット社のパワーコマンダーV(ファイブ)を装着。いわゆるサブコンと呼ばれるインジェクションコントローラーで、エンジン回転数に合わせて燃料噴射量を調整することで出力特性を変えることができる優れモノ。10年ぐらい前に最初のパワーコマンダーを使ったことがあるが、当時は弁当箱のような大きさだったことを考えると進化したな?。さらに言うと、FI(フューエルインジェクション=電子燃料噴射装置)になる以前はキャブレターのジェットキットを販売していた。キャブレターの時代はセッティングを変えるのにいちいちキャプをばらしてメインジェットやニードルを交換していたことを考えると・・・。今やネオクラシックのスラクストンでさえFIだからね。

パワーコマンダーV/価格:55,440円

 

_D3E3703.JPGダイノジェット社のワイドバンドコマンダー2を装着。これは正確なA/F(空燃比)をリアルタイムで分析できるA/Fモニターである。FIのセッティングは空燃比を基準に考える。理論空燃比というものがあるが、これは理想的な燃焼に必要な空気と燃料の割合のことで14.7が最適とされる。つまり、ガソリン1gに対して空気14.7gの割合で混ぜるとよく燃える。ただし、実際にはパワーを出すため燃料は濃いめになっていることが多い。特にスラクストンのような空冷エンジンでは燃料によってエンジン自体を冷やす効果も期待されているため、セッティングはリッチ(濃いめ)になる。ただ、燃費を稼いだり、高回転での伸びを求めたい場合はリーン(薄め)のほうが有利な場合もあり、耐久レースではそのサジ加減が勝負所になったりもするのだ。ちなみにディスプレイはエンジン回転数なども同時に表示できるが走行中はとても見ることはできない。あくまでもメカニックが簡単にセッティング状態を確認するためのものと考えたい。

ワイドバンドコマンダー本体キット/価格:6万4800円 LCDディスプレイ/価格:5万2,290円

 

IMG_7514.JPGアロー製フルエキゾーストマフラー。トライアンフ純正アクセサリーで本場、スラクストンカップでも装着率が高い。オールステンレス製のしっかりした作りで弾けるサウンドとともに走りも一変。パワーコマンダーと合わせて6PSアップ! といっても後軸出力で66PSとなんとも奥ゆかしい。日本では公道走行不可ということでトライアンフの国内版サイトでは扱っていないのが残念。正規ディーラーで直接問い合わせてみてください。

価格:14万7000円

 

_D3D8249.jpgスラクストンのエンジンは空冷でしかもレース用として設計されているわけでもないため、夏場の耐久レースに出ようと思ったら油温対策は必須になる。今回もオイルクーラーに風を集めるシュラウドなどを作ってみたり、フォークにウイングを取り付けたりしてみたが、思うような効果が上げられず、最終的にはオイルクーラーを増設したがこれが大変だった。スラクストン用としては特に出ていないため、汎用タイプでフィットしそうなものを選んでトライアンフ市川で取り付けてもらった。ホースの取り回しやフィッティング形状などが微妙なため、取り付けには加工が必要になるはず。技術力のあるショップで相談してほしい。

プロト製ラウンドタイプオイルクーラー/価格:6万4,000円(フィッティング別)

 

IMG_7534.JPGアルミ削り出しパーツが美しい、トライアンフ鈴鹿製バックステップキット。バーの位置が4ポジションで調整できて正チェンジと逆チェンジの両方の設定ができる優れモノ。レースでは当然逆チェンジ。何故ってコーナーを立ち上がりながらシフトアップするとき、正チェンジでは足が入らないときがあるから。それに、シフトパターンも“上げる”より“下げる”ほうが素早くできるためタイム短縮にもつながるしね!

価格:6万8000円

 

IMG_7494.JPGスラクストン用外装キット。トライアンフの旧車などを扱っているブリティッシュビート製でフロントカウル&スクリーン、タンク、シートカウル、ステー類などからなる。材質はFRP。「もて耐」ではレギュレーションの関係で樹脂製タンクが使えなかったが、60年代スタイルにこだわるならコレ。雰囲気を楽しむサンデーレースなどでは樹脂タンクを使用できる場合もあるし、特にストリートカスタムにはおすすめだ。

ロケットカウルキット/価格:14万7,000円(タンク、シートカウルは別)

 

_D3E4681.jpgリヤショックはオーリンズの最高峰タイプをチョイス。しかも、ZRX1200R用をベースにスラクストンレーサー用にモディファイした特別仕様なのだ。サーキット走行を前提にスプリングをシングルレートに交換するとともに減衰特性も見直すことでトラクションと旋回安定性を向上。車高調整もできるフルアジャスタブルタイプで、セッティングによってマシンの姿勢を自在にコントロールできるため走りが劇的に変わる。今回「もて耐」にライダーとしても参加してくださった、カロッツェリアジャパンの塚本さんのノウハウが注ぎ込まれた一品モノと言っていい内容になっている。オーリンズ発売元のカロッツェリアジャパンで全く同じ仕様をオーダーできるので、スラクストンでスポーツライディングを楽しみたい人にはぜひおすすめしたい。

オーリンズ・ニュージェネレーションツインショック「スラクストンレーサー用スペシャルコンプリート」 価格:23万4000円

 

 

 

 

 

184-9.JPG限界域での制動力はもちろん、優れたコントロール性に定評のあるZCOOブレーキパッド。レバーを握り込むごとにリニアに効力が立ち上がる独特のフィーリングが好きだ。WSSでトライアンフ675を駆る元WGPライダー、ギャリー・マッコイも使用していただけにその性能は折り紙つき。今回は耐久レース用に開発されたTYPE-Cではなく、STDタイプを使用したが効力、耐久性ともに十分。世界屈指のハードブレーキングコースとして知られる「もてぎ」でも、重い車体とシングルディスクのスラクストンのハンデを見事にカバーしてくれた。

ZCOOセラミックシンタード/価格:8,190円

 

IMG_0157.JPGオイルはPANOLINを使用。2004年の鈴鹿4耐にデイトナ675で参戦したときも、猛暑の中ノントラブルで走り切るなど信頼性の高さは証明済み。今回も気温33℃の中、7時間の長丁場を158周、トータル走行距離758?をレーシングスピードで走り切った。空冷エンジンにとってはまさに血液ともいえるオイルだが、走行中の油温は120℃前後(オイルクーラー増設)で終始安定し、熱ダレの兆候もなくミッションタッチも最後まで良好だった。バイオデグレータブル=生分解性(微生物によって分解され1カ月でほぼ自然界に戻る)という地球に優しいコンセプトもお気に入り。

PANOLIN 4T BIO RACE 10W/50/価格:4,830円(1L)

 

 

Written on 11月 24th, 2010 , スラクストン

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COMMENTS
  1. gucchi865 commented

    初めまして、スラクストン乗りのgucchi865と申します。
    待望のスラクストンレーサー解説、9月からずっと待ってました。
    各種雑誌でも取り上げられていて、活躍ぶりが自分のことのように
    嬉しかったです!
    自分もこのバイクに惚れ込んでいて、一生乗るつもりでキャブや
    ブレーキキャリパーを変えたり、ホイールをチューブレス加工したりと
    色々とやってきましたが、サス・タイヤ・減速比の変更がとても参考に
    なりました。
    峠を走っているだけですが、全開にするとハンドルが振られてしまいます。
    ステアリングダンパーをつけてみようかと考えているのですが、
    サスを換装することで、色々な振動が収まるようなことを書かれていた
    ようなので、迷っていますがどうでしょうか?
    まだまだスラクストンでのレース活動が続くようなので、楽しみに
    しています。スラクストンカップへ参戦する日まで頑張ってください。
    いつか、日本でもスラクストンカップが開催されることを期待しています!

    返信
    2010年11月24日 at 11:50 PM
  2. k_sagawa@mbmoto commented

    >gucchi865さん
    コメントいただき、ありがとうございます! すみません、お待たせしてしまって・・・。ブログや記事を参考にしていただければ私も嬉しいです。gucchi865さんのスラクストンへの愛情が伝わってきました。ステアリングダンパーの件ですが、STDのスラクストンはたしかにペースを上げるとリヤサスが頼りない感じになりますね。サーキット走行となると私も当初は危惧していたのですが、リヤサスをオーリンズに交換することで、振られやアンダーステア傾向が出なくなりました。フロントフォークは内部の減衰機構のモディファイだけですが、前後セットで足回りが決まってくればマシンの挙動はとても安定したものになりますので、ステアリングダンパーは必要ないと思います。「もてぎ」や「筑波」でも大丈夫でした。本国のスラクストンカップレーサーも付けてない場合が多いようですね。“振られ”は乗り方である程度カバーできますが、もし気になる場合はまずはサスペンションのグレードアップからご検討されたほうがよろしいかと思います。ステダンはあくまでも補助的なものですので。「スラクストンカップへの道」を応援いただきありがとうございます。頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします!
    ケニー佐川

    返信
    2010年11月25日 at 6:34 AM

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